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睡眠障害改善のために効果的な方法とは?

健康な睡眠の秘訣「重炭酸温浴」で快眠を手に入れよう

はじめに

睡眠障害は、現代人が抱える大きな問題の一つです。国際的にみても日本人の睡眠時間は短く、その短い時間の中でいかに快眠を得るかは重要な課題ですが、睡眠障害を改善するために飲み薬を使うのは抵抗感がある方も多いかと思います。

就寝前の温浴により深部体温を上げ、末梢の血管を拡げて血流をよくすることで睡眠障害が改善されることはよく知られていますが、特に重炭酸温浴の有効性が確認されているのです。本記事では、この注目の方法「重炭酸温浴」について、その効果に迫ります。充実した睡眠を取り戻したい方へ、ぜひ一度ご覧いただきたい内容です。

1.私たちが健康に生きるために、睡眠はとても大切な時間です

睡眠は、日中の活動による疲労を回復し、免疫を整えて傷ついた細胞を修復し、成長ホルモンを分泌して新陳代謝を促す、大切なメンテナンスの時間帯です。ぐっすり眠れない日々が重なると、日中のパフォーマンスが落ちて心身の元気がなくなるだけでなく、インスリン抵抗性を招いて糖尿病のリスクを上げたり、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの蓄積を高めたり、また夜間活躍するリンパ球の働きを弱めてがんの発症に関わったりと、様々な病気との関連も報告されています。

2.睡眠に関してこんなお悩みはありませんか?

大切な夜の睡眠、あなたはこんなお悩みを抱えてはいませんか?
・ベッドに入ってもなかなか寝付けない
・夜間、睡眠の途中で何度も目が覚めてしまう
・朝早く目覚めてそれ以降眠れないことがある
・日中気分が落ち込むことがある
・仕事や家事のパフォーマンスが下がっている
・日中眠くなることがある

私たち人間の深部体温は37℃±0.5℃に維持され、その範囲の中で1日24時間の概日リズムを刻んでいます。深部体温が高い日中、人は覚醒して代謝を上げ、活動的になります。深部体温が低い夜間は休息の時間帯として、体は自ら代謝を下げ、睡眠をとるようにプログラムされています。

活動時の日中は交感神経優位で収縮していた末梢の血管が、休息時の夜は副交感神経優位になり拡がることで、深部の熱を逃がし、深部体温を下げて、覚醒モードから睡眠モードへと移行するのです。

ところが、もともと深部体温が低く睡眠前の深部体温の下げ幅が小さい方や、末梢の血管が収縮したままで放熱できない冷え性の方では、この切り替えがうまくいかず、睡眠の質が下がってしまいます。睡眠障害の根底には冷えがあるのです。

 

3.重炭酸温浴の驚くべき効果

重炭酸温浴は温泉としても知られ、ドイツでは療養泉として生活習慣病の保険適用にもなり、その治療効果は国際的に認められています。重炭酸温浴に含まれる重炭酸イオンが血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の分泌を介して血管を拡げ、血流を促すことで、体に負担をかけずに深部体温を上げることが報告されています(※1)。

個人差はありますが、20分以上の重炭酸温浴により深部体温が1℃近く上がると、それを下げようとして末梢の血管が開いて血液を流して放熱するため、深部体温の下げ幅がしっかり確保され、体はそれに反応してスムーズな入眠モードに入ります。

また、社会生活を送る上で避けられない人間関係の悩みや、加齢とともに増える病気の悩みなど、簡単に解決できないお悩みがあると、夜も交感神経が刺激され続け、血管が収縮してやはり放熱ができなくなり、眠れない、という悩みが加わることになってしまいます。

このような方にも、重炭酸温浴は末梢の血管を拡げて副交感神経を優位にし、リラックスモードを提供して睡眠の質を上げることが期待されています。

 

4.重炭酸温浴の3つのメカニズム

4.1 重炭酸イオンを介した血管拡張物質NO(一酸化窒素)の分泌が血管を拡げる重炭酸イオンが皮膚から吸収されて、血液中の酸塩基バランスが崩れることで、血液pHを一定に保つ緩衝作用が働くとともに血流を促します。一方、重炭酸イオンはまた血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)の分泌を高めます。NOは血管を拡張させる作用を備え、拡がった血管の中を血液が流れやすくしてくれます。
血管拡張のメカニズム
4.2 深部体温を上げる
重炭酸イオンのNO分泌により、熱の力を借りずにぬるめの湯温でも血管が拡張して全身の血流がよくなるため、心血管に負担をかけずに副交感神経優位な状態を保ちながら深部体温の上昇を導きます。

4.3 放熱を促す
温浴により上昇した深部体温は、末梢血管からの放熱により徐々に下がります。重炭酸温浴のもう一つの特徴は、出浴後の末梢に冷えを感じず、湯冷めしにくいこと。これは末梢の血管拡張作用の持続によるもので、お風呂から出た後も手足のぽかぽか感が続きます。スタンフォード大学の西野精治先生の研究でも、温浴によりいったん上昇した深部体温が下がる時、その下げ幅を十分にとることが入眠のために必要であることが判明しています。
睡眠にた体温の高さが重要

5.重炭酸温浴法で睡眠障害が改善した例をご紹介します

5.1 冷えに悩む成人女性で、3ヵ月の重炭酸温浴により寝つきが改善した例
通年性の冷えに悩む成人女性19名(平均年齢42.6±7.5歳)を対象として、家庭での重炭酸温浴による入眠潜時(ベッドに入ってから寝付くまでの時間)を検証しました。1日20分、3ヵ月間毎日の重炭酸温浴により、入眠潜時は有意に改善しました(第84回日本温泉気候物理医学会学術総会 2019)。

入眠グラフ

5.2成人男女健常人で、1ヵ月の重炭酸温浴により睡眠の質が改善した例
成人男女健常人60名(平均年齢41.3±10.9歳)を対象として、家庭での重炭酸温浴による睡眠への効果を検証しました。1日20分、平均週5回の重炭酸温浴により、睡眠の質は有意に改善しました(自社データ)。

睡眠の質の変化グラフ

 

まとめ

睡眠は心身の疲労回復のみならず、免疫の増強やホルモン分泌の調整、記憶の整理や定着の役割を持つ重要な生理現象です。日中のパフォーマンスの低下のみならず、重篤な疾病に繋がりかねない睡眠障害が、薬に頼らず重炭酸温浴により改善できることは、大きな福音です。様々な試験結果が示す重炭酸温浴の睡眠障害改善効果を、ご自身で体感してください。
※参考資料:Scientific Reports 11, 21789 (2021)

筆者・奴久妻 智代子

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