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酵素美人は毎日のお風呂から──重炭酸温浴というセルフケア

●体内で休みなく続く化学反応と酵素の役割

私たちの体の中では、食事で得た栄養をエネルギーに変換したり、細胞の修復・再生を行うために、常に無数の“化学反応”が進行しています。これらの反応を円滑に進めているのが“酵素”です。酵素は、化学反応を速く・正確に進める“生体の触媒”であり、生命活動の原動力ともいえるタンパク質です。

この酵素がもっとも働きやすいのは、体温が37℃、体内のpHが中性に近い弱アルカリ性に保たれているときです。ところが、現代人に多い慢性的な冷えやストレスの蓄積は、体温の低下を引き起こし、それに伴って体内のpHも酸性側へ傾きやすくなります。この“低体温+酸性環境”は酵素にとっての二重苦となり、その働きを著しく低下させます。

例えば、エネルギーを作る細胞内のミトコンドリアでは、体内で使われるATPというエネルギー分子が、まるで工場のように、いくつもの酵素の働きを順番につなぎ合わせてつくり出されます。この過程で、エネルギー産生にかかわるすべての酵素が、適切な体温とpHのもとで効率よく働くことが重要です。これが乱れるとエネルギー不足に陥り、疲労感や免疫低下、回復力の鈍化といった慢性不調につながる可能性があるのです。

つまり、体温とpHを酵素が十分働ける状態に保つことが、内側からも外側からもきれいに、毎日を元気に過ごすための土台なのです。

●酵素の働きを妨げる、見落とされがちな生活習慣

酵素の活性に影響を与える環境要因として、運動不足やエアコンの多用による冷え、精神的ストレスなどが知られていますが、意外と見落とされがちなのが“入浴習慣”です。

入浴は本来、体を温めて副交感神経を優位にし、心身のリラックスを促す大切な時間です。しかし、洗浄剤や入浴剤の使い方、水質などにより、逆にストレスの場になっている可能性があるのです。

皮膚のバリア機能は、皮脂や角質細胞間脂質といった天然の保護膜によって守られていますが、洗浄剤による洗い過ぎや合成化学物質への繰り返しの接触によって、このバリアは一時的に弱まる可能性が指摘されています。バリアが弱まると、外的刺激を防ぐ力が落ち、交感神経の緊張から末梢血管の収縮を通じて、血流低下、そして冷えを引き起こすことにつながるといわれています。

体を温めているつもりが、実は冷やしている――このような背景から、“何を入れるか”以上に“何を入れないか”という視点が、酵素の活性を守る上でもとても重要であると、わたしたちは考えています

●重炭酸温浴は化学ストレスを避け、血流と体温を守る

まず見直したいのは、お風呂に“入れないこと”の大切さです。

重炭酸温浴は、合成化学物質を使わずに行える温浴法のひとつであり、肌にやさしい無添加のアプローチが特徴です。重炭酸温浴では、ビタミンC(アスコルビン酸)の還元作用によって水道水の残留塩素を速やかに中和し、肌や髪への酸化ダメージを抑えることができます。化学物質に敏感な赤ちゃんや、肌の乾燥や痒みに悩む方にも、家族一緒にお風呂に入れる環境を提供したい、というのがわたしたちの願いです。

また、界面活性剤を含む洗浄剤を使わなくても、重炭酸イオンの作用で肌の汚れを落とす、食品グレードの重曹とクエン酸を使ったシンプルな湯浴みは、皮膚バリアを保ちながら、血流と体温の維持に寄与します。

●重炭酸温浴──ぬるめのお湯でも血流と体温をしっかり上げるしくみ

重炭酸温浴の大きな特長は、ぬるめのお湯でも血流を促し、深部体温を上昇させ、芯まで温まる点です。

通常、体温を上げようとすると高温浴や運動を思い浮かべますが、高温浴は逆に深部体温を上げず、また運動による体温上昇は、筋肉の活動によって体内が酸性に傾く(pHが下がる)傾向がみられます。

一方で重炭酸温浴は、体温を上げながら血液のpHを下げないことが臨床データからも示唆されています。

そのメカニズムには、皮膚から吸収された重炭酸イオンが血液緩衝系に働きかけ、pHを整える役割を果たしているということ、また、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の産生を促進し、これが血管をゆるめて自然な血流の亢進と深部体温の上昇につながっていることが、科学雑誌でも報告されています(Scientific Reports 2021)。

つまり、激しい運動をしなくても、無理な高温浴をしなくても、リラックスした状態にいながら酵素が働ける温度とpHの環境が整うのが、重炭酸温浴の最大の特長です。

特にストレスが多く、交感神経が過緊張しがちな現代人にとっては、ぬるめのお湯で、副交感神経を優位にしながら血流と体温を整えるこの方法こそ、体を根本から整えるセルフケアの核になり得ると私たちは考えています。

●酵素が働く体内環境を、自宅の湯船で整える

酵素が本来の力を発揮するには、体温・pH・酸化ストレスの最適なバランスが必要です。重炭酸温浴は、これらを自宅のお風呂を使って整える、シンプルかつ本質的なセルフケアです。

ぬるめのお湯でも深部体温を上げ、pHを安定させ、余計な化学物質を使わないことで、交感神経の緊張をゆるめながら体を内側から整えていく、このような入浴習慣が、薬だけに頼らず自分の力で回復力を取り戻す第一歩になるかもしれません。

健康を整える力は、外から補うだけでなく、自分の中に本来備わっています。その力をもう一度目覚めさせるために、湯船という日常の中に、小さな科学的アプローチを取り入れてみるのも一つの方法です。

酵素が快適に働く状態を、自分自身で育てていく──その第一歩は、今日の入浴から始められます。

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